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明日への視角

民主党政権への期待

初岡昌一郎(ソーシャルアジア研究会代表)

 次期衆議院選で民主党が勝利し、政権を担当することに期待がたかまってきた。しかし、民主党の現状を見ると、党自体がにがりの薄いおぼろ豆腐のように崩れやすい危惧を払拭できない。自民党が単独過半数を割り込む可能性は高いので、その際は単独政権に固執するよりも、他の勢力との提携で民主党中心の政府を構成することが新政権の安定性と持続性を高めるだろう。
 こうした連立政権のカギは、公明党との協力にある。公明党はこれまで自民党と連立を組んできたが、この関係には疲労が目立つようになっており、支持者の間で不満が表面化し、自公連立見直しの動きも最近では伝えられている。
 公明党の政策は全般的に見れば、自民党よりも民主党に近いのは明白だ。対外政策は民主党よりもハト派的ともみえるし、福祉と格差是正に熱心だ。民公合作こそは安定した政権基盤を生みうる唯一の道であろう。この提携は自民党リベラルや、社民党、国民新党との連携を阻害するものではなく、むしろ促進効果を持たせうる。
 いかなる形であれ民主党政権が誕生した場合、最初の数ヶ月の間に抜本的な政策転換が鮮明にされなければ、期待は失望に変わり、失速しかねない。 少なくとも、次の3点で目に見える変化の兆しを期待する。
 第一は、北朝鮮の核問題を契機に生まれた6者協議の枠組みを拡充することなどを通じて、新しいアジア安全保障体制を構築することを目指してほしい。日本が率先して軍縮を主導することが歴史問題への最上の解答であるし、近隣諸国との信頼醸成と民生への財源確保という、一石二鳥の良策である。
 第二は、地方において顕著な経済的社会的衰退を食い止め、過密な一極集中を解消する抜本的改革を目的とする“ニューディール”政策。
 第三は、貧困と格差、および不安定・不公正な雇用を解消するための施策である。社会労働の分野では、有効な最賃制と超過勤務時間の法的上限設定が国際労働基準からみて不可欠だ。

生活経済政策2008年9月号掲載