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明日への視角

構造的内需拡大論の提唱

蛯名 保彦(新潟経営大学学長)

 日本経済がバブル崩壊後の不況から回復する上で重要な役割を果たしてきた円安と輸出拡大が今や限界に直面しているということは周知の通りである。世界的な金融危機の下でのドル不安を背景とする円高傾向と世界同時不況の相乗作用により輸出市場がスパイラル的に縮小し始めている。だが注意を要するのは、円安・輸出拡大に依拠した景気拡大の限界はこうした短期的な問題としてだけでは済まされないということである。そこには中長期的に観ても極めて深刻な問題が潜んでいるからだ。すなわち、円安は交易条件の悪化を通じて「冨」の海外流出を招き日本経済の潜在成長力の低下をもたらし、さらに輸出拡大、とくに相対的に賃金水準の低い新興国へのそれは賃金の低位平準化を通じて国内雇用問題を深刻化させ内需縮小を招いている。われわれは、「円安・輸出主導成長」の下での「負の連鎖」という陥穽を見落としてはならないのである。
  金融危機・経済危機・雇用危機のグローバル連鎖の下で、日本経済もまた「グローバル・ニューディール」の一環としての「内需拡大」を求められている。では、「内需拡大」とは何か。それは上記の「負の連鎖」を断ち切るということに他ならない。つまりそれは、円安の下でしかも過度に海外市場に依存した現在の輸出主導成長路線を「新たな経済発展路線」に切り換えるという中長期的課題にも関わっているのである。そのためには、一方で交易条件改善、労働分配率引き上げ、セーフティーネット整備によって国内需要を拡大すること、他方では成熟経済の下で台頭する「社会的ニーズ」の充足によって日本経済の潜在成長力を高めていくことが必要であり、さらにそうした「新しい発展」を可能にするための構造改革もまた必要である。われわれはそうした意味での「構造的内需拡大」を提唱する。
  だがそのためには、(イ) 政策の公共性(なかんづく金融・通貨のグローバル市場における公共政策)、(ロ) 政策の重層性(雇用政策、地域政策、環境・エネルギー政策、アジア政策との関連性)、(ハ) 政策の連動性(短期政策と中長期構造政策との連動性)、(ニ) 政策の体系性(政策割当の戦略的マッピング)  —という諸点で、高度な戦略性が求められているのである。

生活経済政策2009年3月号掲載