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明日への視角

明日に立ち向かう心構え―「草創」と「守成」―

泉田和洋(電機連合書記長)

 中国は唐の国の太宗(帝王)が、優秀な二人の家臣に次のように尋ねた。「今、皆の力で唐という国はできた。ところで、草創(新しいものを創り出すこと)と、守成(新しく創り出したものを守り育てること)とは、どちらが困難なことであろうか?」と。
 すると、片方の家臣が、「私たちは並みいる強敵との争覇戦を勝ち抜き、新しい国を創りました。まさに命がけで成しえた大業です。従い、草創こそが難しいことと思います」と応えた。続いて、もう一方の家臣が、「いやいや、新しくできたものを、さらに大きく強くしていくためには、時代の先を読み、常に緊張感と危機感をもって、地道な努力を根気強く続けていかなければなりません。このことは並大抵なことではなく、従い、守成こそが難しいことかと思います」と応えた。
 二人の意見を静かに聞いていた太宗は、「二人の意見はそれぞれに正しい。ところで、今、私たちが唐の国を創ったという意味で草創の困難は去った。これからは全員の力を合わせて、守成の困難を乗り越えて行きたい」と答えた(以上は意訳)。政治学・リーダー学の教科書ともいえる「貞観政要」に出てくる一説だ。
 会社経営の格言として馴染みの「創業成り易く、守成成り難し」はこの話に基づいているものと思う。
 しかし、時代が21世紀に入り、経済・市場のグローバル化の進行にともない、企業は世界規模での熾烈な競争にさらされて来ている。このような中、各企業は、自らの生き残り・勝ち残りを賭けて、社外分社、合併、合弁、買収、営業譲渡など、これまでにはあまり例を見なかった経営戦略を打ち出し、その実行に向けて必死の取り組みを続けている。
 これらの現状に直面した時、ふっと頭の中をよぎったのは、「世の中は今、再び草創の時代を迎えているのではないか」ということであった。高度成長期には、確かに「守成」に心を置いた経営や組織運営で間違いは無かった。しかし、今は、「草創」か「守成」かのいずれかではなく、「草創」と「守成」の両方の心構えを適切に使い分けながら、押し寄せる荒波を乗り越え、私たち労働組合や企業の持続的な発展を期していかなければならない時代だと思う。
 「草創と守成」の言葉が、私の、明日へ立ち向かう視角を大きく広げてくれた気がする。


生活経済政策2009年6月号掲載