変革への挑戦 ―内なる転換の実践を!―
徳永秀昭(自治労委員長・生活研副会長)
昨年の秋に鳩山政権が発足し、待ち望まれていた「政権交代のある民主主義」への第一歩を踏み出した。まさに国民全体が「転換のとき」を感じたのではないだろうか。政権交代という大「転換」を成し遂げた今、新たな時代に的確に対応できる労働組合の体制整備をはかる必要があると考える。そのために、私たちは、私たち自身の発想の転換と変革を求められているのではないか。
長きにわたる市場万能的な構造改革路線により、地域は疲弊し、切り捨てられてきた医療や介護、福祉サービスなど、社会的セーフティネットは危機的な状況にある。労働の現場においても、長時間労働やサービス残業を余儀なくされ、過労やストレスによる病気や自殺、長時間労働に見合わない低賃金を強いられている労働者も多数いる。また、雇い止めや非正規労働者の増大を背景とする貧困、新卒者の内定率の低さなど、将来にわたる大きな危機感を抱かずにはいられない。
こんな状況を打開するためにも、地域の活力を取り戻すことが喫緊の課題である。持続可能な地域づくり・仕事づくりのために、地域の特性を生かした地場産業の育成、まちづくりの推進、それを通じた地域雇用の拡大を進めていく必要がある。自治体が職業訓練の場を提供し、雇用を創出していくことも大切だ。これまでの自治体は、企業誘致による雇用創出を考えがちであったが、今こそ地場の産業づくりが必要である。
効率性だけを重視した自治体運営による疲弊が、地域から雇用を奪ってきた。非効率であっても、地域には医療も福祉も必要なのだ。それぞれの地域の特性を活かし、その地域にあった、その地域でしかできない施策を打ち出していくことで、必要な雇用を創出することができる。過疎地や中山間地であっても、誰もが安心して暮らしていくことのできる社会構造へと変革させていかなければならない。
地域で公共サービスを担う労働組合として、その社会的な使命を果たしていくためにも、「常勤—非常勤」「公務—民間」を超えた「公共サービス労働組合」へと変革していく時がきている。
地域を活性化し、公共サービスを再生することによって、地域全体の生活の底上げが可能となる。格差のない誰もが安心して暮らしていける「労働を中心とする福祉型社会」をつくるため、私たち労働組合の果たすべき役割は、ますますその重みを増している。
(生活経済政策2010年3月号掲載)