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明日への視角

若年をホームレスにしないために

宮本みち子(放送大学教授)

 

 長期不況と経済構造転換のなかで、若い世代の生活基盤は衰弱が著しい。それは、若年ホームレスの増加に端的に現れている。ネットカフェやファミレスや知人宅を転々とし、所持金が底をつけば路上で夜を明かす若者たちが世間の関心を引いたのは2008年のリーマンショックだったが、実はそれより前から増加しつつあった。

 特定非営利法人ビッグイシュー基金が、若い50名の「ビッグイシュー」販売員を対象に実施した聞き取り調査によれば、彼らは不利な条件を複数抱えている。家庭の貧困や不和などの複雑な事情、それが背景にあっての低学力、不登校、中卒や高校中退を経験した者が多い。心身の障害をもちながら適切な手立てが講じられることなく現在に至っていることも少なくない。多くの場合、うつ的傾向や意欲の低下など、“心”の問題も抱えている。帰れる家庭がないばかりか、相談できる知人がいない孤立した状態にある。

 ホームレスの若者には「住まい」がまず大事だが、それだけでは問題は解決しない。

 立ち直るためには「安心できる場所」や「自己肯定感」が不可欠で、人間的な「つながり」の回復が必要だ。そのためには、若者の現実を丸ごと理解し、複雑に入り組んだ障碍を一つひとつ解決するための助っ人が必要だ。また、多様な団体や人々の支援のネットワークが必要とされる。

 そのうえで、仕事を得て自活できるための支援が必要だ。そのためには、トライアル的就労の場の拡充、職業訓練や資格取得、多様な就労を受け入れる地域・団体・企業のネットワークを作らなければならない。また、その間の生計を支えるすまいと経済的支援がなければならない。

 東京都内にあるNPO法人「自由と生存の家」は、古いアパートを改築し、自力で家を借りることが困難な不安定就労の人々に対して、初期費用・保証人なしの低家賃で提供している。入居者同士が生活上の問題を話し合う自治会が月に1度行われ、単なる寝場所としての住宅ではなく、入居者同士がゆるやかなつながりの中で助け合い、相談し合える場になっている。

 日本には約760万戸の空き家がある。もっと活用できるはずだ。多様なシェアハウス、グループホーム、まかない付下宿など、孤立しない住まいがほしい。入居できるための家賃補助、グループホーム運営補助などの補助金がほしい。また、気楽に利用できる一時入居施設やシェルターの充実が望まれる。個々人の個性や事情に応じた多様な場所を作る取り組みを進める必要がある。

生活経済政策2012年9月号掲載