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明日への視角

市民が紡ぐ交流

加藤良輔(日本教職員組合中央執行委員長)

 「謝々!謝々!再見!再見!」何度も繰り返しながら、涙をためた目で私を見てくれる音楽教師がいた。国の違いはあるけれど、真剣に学ぼう、貪欲に知識を吸収しようとした彼女らの姿に、同じ教員として私の目頭も熱くなった。
 昨年の秋、縁あって中国河北省易県の、教育局長はじめ小中学校の音楽教師を私の地元である神奈川県平塚市にお招きし、交流させていただく機会を得た。
 窓口になっていただいたのは、日本側は公益財団法人日本中国国際教育交流協会、中国側は宋慶齢基金会。私自身が中国を訪問した際提案した教育実践交流でもあったから。十分だったかどうかはわからないが、精一杯のお世話をさせていただいた。平塚の先生方も、教育長はじめ多くの方々が暖かい心で迎えていただき、すばらしい研修や授業を見せてくださった。
 お別れの時、先生方の感謝の念にあふれたまなざしと、バスの窓から力の限り手を振り続けてくれたあの姿、そして帰国後いただいた、過分な感謝の言葉が忘れられない。
 国と国との間では様々な利害の対立はあるだろう。特に日中韓の東アジア社会をみたとき、歴史をはじめとした認識の違いも相当大きなものがある。それでも昨今の軋轢を見ていると、為政者や一部のメディアが対立を煽っているとしか思えない。そんな中で、各地の自治体間交流や民間交流が中止されている事態を大変残念に思う。
 私が神奈川で組合活動にとりくみ始めた頃、神奈川の知事だった長洲一二氏の講演を聴く機会を多くいただいた。経済学者時代の先生のお話を聴く機会はなかったが、知事時代の先生のお話には教えられることが多かった。

 知事は「民際外交」という考えを話されたが、実際多くの自治体交流を進められるとともに、民間交流の後押しもされていた。言わんとするところは、国と国との交流は国同士だけでは広がらないし深まらないということだったのだろう。真に平和な関係は、民間レベルの交流の広さ・深さ・真剣さが創り出すものというお考えであったのだろうと、今にして思う。

生活経済政策2012年11月号掲載