月刊誌紹介
月刊誌紹介
2021年
2020年
2019年
2018年
2017年
2016年
2015年
2014年
2013年
2012年
2011年
2010年
2009年
2008年
2007年
2006年
2005年
2004年
2003年
2002年
2001年
2000年
1999年
1998年
1997年
明日への視角

幸福度の議論と経済政策

小峰隆夫(法政大学大学院政策創造研究科教授)

 近年、「幸福度」についての関心が高まっている。経済の究極の目標は人々をより幸せにすることなのだから、こうした幸福度の分析が進むのは望ましいことだと思う。しかし、これを「経済政策」という観点からどう位置付けるかについては、慎重に考えてみる必要がある。
 内閣府経済社会総合研究所は、2012年3月に大規模なアンケート調査を行って、人々の幸福度を調べ、どんな要素が幸福度に影響しているのかを分析している。この調査によると、おおよそ「所得水準が高くなるほど、幸福度も高い(特に「生活のやりくり」が楽であるほど幸福度が高い)「仕事をしている人は幸福度が高い(失業者は非常に低い)」「結婚している人の方が幸福度が高い」「健康な人ほど幸福度が高い」「学歴が高いほど幸福度が高い」「困難な時に助けてくれる人の数が多いほど幸福度が高い」という結果が得られている。この結果から、私は次のように考えている。
 第1に、オーソドックスな経済政策の目標を達成することは、人々の幸せのためにも大変重要だ。経済政策の大きな目標は、サステナブルな形でできるだけ高い成長率を実現し(できるだけ高い所得水準を実現し)、失業率を引き下げ、物価を安定化させることだ。適切な経済政策によってこれらが達成されれば、人々の生活は安定し、失業率も下がるから、人々の幸福感は高まるはずだ。
 第2に、幸福度に関係するからといって、政府が直接介入すべきかどうかは疑問だと思われる分野も多い。例えば「結婚している人」「学歴の高い人」の方が幸福度が高いからといって、政策的に結婚や高学歴を奨励すべきかは疑問である。世の中には「結婚しない」「学歴にはこだわらない」という道を選択している人も多いからだ。
 政策的に対応すべきなのは「結婚したくてもできない人」や「より高い教育を受けたくても受けられない人」にそれができるような環境を整備していくことであろう。それはまた、できるだけ所得を引き上げ、生活を楽にするということでもある。
 第3に、そもそも政策的に対応することが難しい分野もある。例えば、どうすれば「身の回りに助けてくれる人がいる」という状態を作り出すことができるのだろうか。個人のプライバシーを侵さない形で、それを政策的に実現するのはかなり難しいだろう。
 このように考えてくると、国民全体の幸福度を高めたいのであれば、政策的には、まずはオーソドックスな経済政策の目標(持続的な成長、物価と雇用の安定)を最大限追求することが必要だと言えそうだ。

生活経済政策2012年12月号掲載