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明日への視角

最悪のシナリオが見えてくる

人見一夫(生活経済政策研究所顧問)

 昨年12月の総選挙で自民党が勝利し、安倍内閣が誕生した。自民党安倍総裁は選挙中から「大胆な金融緩和」を日銀に求めていた。
 安倍内閣の経済政策は所謂「三本の矢」で、[1]大胆な金融緩和、[2]大規模な財政出動、[3]成長戦略からなる。今年に入って円安になり株価も上昇した。輸出関連企業は過去最大の利益を上げている。何となく明るい方向に向かっているように見えるが本当にそうなのか。
 私たちの身の回りを見ると中小企業や多くの労働者は、アベノミクスの恩恵にあずかっていないのが現状だ。労働者の3割以上を占める臨時・非常勤労働者は春闘でも賃金の改善は無きに等しい。公務員労働者は政府の方針で賃金が引き下げられているのが現実だ。
 今後、消費税の8%、10%への引き上げや社会保障関係費の負担増で、国民の生活は苦しくなる一方だ。賃金の引き上げや均等待遇、格差是正、社会保障制度改革や充実がなければ国民が景気回復を実感することはできないであろう。
 日本の財政赤字はG8サミットでも話題にあがっている。このまま大胆な財政出動をくり返し公共事業に洪水のように国費をつぎ込むことは間違いだ。かつての自民党政府がやっていたように再び税金を垂れ流してはいけない。財政赤字が拡大して日本の信用を失墜し、国債が暴落しギリシャ以上にひどい目に合うことになる。
 円安による輸入価格の上昇で消費者物価は上昇している。油、小麦粉、燃料、マヨネーズ等が値上がりしている。これからも値上げが予想される。
 インフレが進み、借金財政を続けるしかないアベノミクスは、結局のところ国民にしわよせし、未来の世代に大きな負担を残すとともに、日本の信用をおとしめることになるのではないか。「最悪のシナリオ」が見えてくる。

生活経済政策2013年8月号掲載