2020年に向けた「ICT利活用促進」―社会的課題の解決に向けて
野田 三七生(NTT労働組合中央執行委員長)
『ICTの利活用促進による経済の活性化と、国民生活の利便性向上』が言われて久しいが、情報通信や情報サービス産業は、革新的な技術開発や急伸するグローバル化の中で、熾烈な競争環境の只中にある。通信手段も「固定から移動へ」「音声通信からデータ通信へ」の流れが本格化し、全世界の携帯電話契約数は、総人口(約70億人)に迫る勢いで急増しており、出荷台数60パーセントをスマートフォンが占有する状況となっている。
また、総務省の予測によれば、世界のデジタルデータ量は、2005年から2020年までの15年間で約300倍(1300億ギガバイト⇒40兆ギガバイト)にも激増するとのこと。加えて、これらの状況は、「ブロードバンド先進国」である日本においても同様であるが、膨大なデータ量への対応や個人情報の保護を含めたセキュリティ対策が世界的にも求められる中で、とりわけ、2020年の招致が決定した東京オリンピック・パラリンピックの最重要課題となることは言うまでもない。
雑学的に申し上げれば、オリンピック初の国外向けラジオ放送を実現したロサンゼルス大会(1932年)以降、初のテレビ放送となったロンドン大会(1948年)、初のテレビ生中継となったローマ大会(1960年)、そして、初の衛星生中継を実現した東京大会(1964年)など、「ICTはオリンピックと共に進化してきた」とも言われており、先のロンドン大会は、“過去最大のデジタルオリンピック”であった。具体的には、過去最大の大会(300以上の競技種目、1000万人以上の観客数、1万5000人のアスリート、3万人の報道関係者)となる中、テレビやWebによるHD画質の映像配信、2億回以上にのぼる不正アクセスのブロック、50万カ所のWi-Fiスポットの設置(ロンドン全域)――など、まさにICTを最大限に駆使した大会であった。
2020年夏の東京大会まで6年。今後も技術革新が進む中で、さらにICTが進化するチャンスでもあるが、キーワードは、『Big Data』『Open Data』『Personal Data』。世界の皆さんを「お・も・て・な・し」する最高の舞台とするための情報通信インフラの整備はもとより、課題先進国と揶揄される日本において、少子高齢化・人口減少や災害対策等の社会的課題の解決に向けた原動力となる「ICTの利活用促進」が更に進展することを期待したい。
(生活経済政策2014年6月号掲載)