総選挙と今後の政治
山口 二郎(法政大学教授・生活研所長)
年末総選挙は、与党の現状維持、第三極の衰退、共産党の増加という結果に終わった。投票率が史上最低を記録したことも、大きな特徴であった。
アベノミクスの成否について与野党の論争はあったが、国民は「この道しかない」という安倍首相の言葉に共鳴しているというのが、選挙結果の意味するところである。もちろん、世論調査が示す通り、国民の多数はアベノミクスの恩恵を受けていないと感じている。さらに、原発再稼働や集団的自衛権行使などの重要争点についても、安倍政権の方針に反対する者が多数である。しかし、だからといって積極的に安倍政権を倒す必要を感じていない。自分にとって利益になるかどうかとは無関係に、国民もこの道しかないと消極的に考えている。
野村克也氏の名言に、「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」という言葉がある。自民党の勝利は不思議の勝ちかもしれないが、民主党の伸び悩みには理由がある。何より、民主党政権の崩壊から2年経っても、民主党が自民党に代わる選択肢として認知されていないことが最大の理由である。そして、経済政策についてアベノミクスの批判を超えた前向きの構想を打ち出すことはできていなかった。民主党の失敗は、国民から政治的な想像力や希望を奪っている。しかし、ここであきらめては日本では一党優位体制が続くだけである。安倍政権が憲法改正や原発再稼働、さらに社会の二極分化をもたらす経済政策を推進している今、対抗勢力の構築は急務である。
今回当選した議員の顔ぶれを見ると、今まで生活経済政策研究所の研究会に積極的に参加していた中堅議員が再選を果たしたり、復活したりした例が目立つ。特に、北海道の逢坂誠二氏や新潟の西村智奈美氏、静岡の小山展弘氏等が国会に戻ったことはうれしい限りである。民主党が目指す日本のビジョンを、これからしっかりと議論して、政策的基軸を立ててほしい。また、我々もその作業を支援していきたいと思う。この研究所の役割も一層重要になる。
(生活経済政策2015年1月号掲載)