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明日への視角

べンチャー大国イスラエルの秘密

木村 陽子【自治体国際化協会(クレア)理事長】

 ヘブライ語を学びはじめて半年になる。ヘブライ語とはいっても、イスラエルで現在話されているヘブライ語ではなく、旧約聖書で使われている古代ヘブライ語である。源流が古代のフェニキアの絵文字であるアーレフベータと簡単な文法を学んだ後、いきなり旧約聖書の創世記第1章第1節「初めに、神は天と地を創造された」から逐語訳をはじめる。学んだことが左の耳から右の耳に抜けている感じがするものの、めっぽう楽しい。
 これはクラスの雰囲気によるところが大きい。先生はイスラエルのヘブライ大学で6年間学んだ日本人だが、どのような質問や意見を言っても「ほほう、なるほど」と感心して聞いてくださる。先生に「それは違う」と否定されることがなく自由闊達にものが言える。むしろ他人と違う意見や考えを言わないと評価されない。先生曰く、「これがイスラエル、ユダヤの教育。家庭の聖書教育もしかりである。イスラエルの大学や学校では皆自分の考えや意見をわあわあ言っていて、日本の学校のクラスにあるようなまとまりがない」。
 イスラエルは人口わずか810万人で、国土は四国の広さとほぼ同じであるが、国全体がアメリカのシリコンバレーにちなんでシリコン・ワデイ(wadi:ワデイとは中東に多い枯れ川)と呼ばれるほどに多くのベンチャー企業が生まれている。マイクロソフトやグーグルなどの国際的な大企業が、それらのベンチャー企業を将来性を見据えた高値で買収するとともに、開発拠点をおいていることでも有名である。
 ユダヤ系の人々はイスラエルだけではなく、アメリカやフランス、イギリス、ロシアなど世界に散らばっていて、文芸、美術、音楽、演劇・映画、金融、メデイア、ITなどの分野のトップランナーにはユダヤ系の人々が少なからずいる。ノーベル賞受賞者のうちユダヤ系は2割を占めるという。
 ユダヤ系の豊かな創造力、つまりゼロから1を生み出す、無から有を生み出す力の源泉のひとつは、他人と同じ考えでは評価されないというユダヤの教育にあるのだろう。日本でも、人口減少社会で創造力を高めるためのヒントになるのではないか。

生活経済政策2015年11月号掲載