民進党の解体という不幸 — 総選挙後に必要なこと
中北浩爾【一橋大学大学院社会学研究科教授】
前原誠司民進党代表は、実に愚かな決断を行った。“All for All”を掲げ、熟議の党運営を標榜しながら、それをかなぐり捨てて希望の党への合流に走ったのだから。
言行不一致だけでない。一足早く民進党を裏切った細野豪志元環境相らの軍門に下り、同志たちの選別と排除を容認する。そんな不条理を「想定内」と言い放つ。政権交代可能な二大政党を作るためというのが、前原代表の言い分である。総選挙の結果は現時点では分からない。だが、小池百合子代表の人気という「風」頼みの希望の党が、中長期的にみて、強固な支持基盤を持つ自民党に対抗する政党に成長できるとは思えない。
地域に根を張り、多くの友好団体を抱える自民党に対抗する政党を作ろうとすれば、連合の総力挙げた支援を得るほかない。その点で、希望の党も立憲民主党も失格である。生活経済政策研究所に集う産別ですら足並みが乱れている。現場の役員や組合員も戸惑うばかりであろう。このままだと前原代表の狙いとは反対に二大政党制からますます乖離し、自民党の「一強」が進むだけである。それは日本政治にとって不幸な事態である。
民進党はバラバラと批判されてきたが、内部をみると理念や政策の一体性が確実に高まっていた。先月号の本誌の座談会でそう語っていた長妻昭・泉健太両議員が、なぜ別々の党に行かなければならなかったのか。私には全く理解できない。保守とリベラルの対立などではなく、結局、民進党が野党共闘で共産党に引きずられすぎた結果、それに対する不満が鬱積し、今回の事態を招いたに過ぎない。山尾志桜里議員をめぐるスキャンダルに直撃された民進党は自力再建を成し遂げる見通しを失い、左右に引き裂かれてしまったのである。
そうだとしたら、総選挙後に必要なのは、希望の党と立憲民主党を解体し、民進党出身の無所属議員と合流して新たな政党を作ることである。幸いなことに、民進党の参議院も、党本部や地方組織も残っている。連合にとっても、「股裂き」の解消が急務である。もちろん、第二の民進党を作るだけでは十分ではない。今回の教訓を踏まえ、独自の政権戦略を打ち立てるとともに、地域に根を張る党組織を目指すことが不可欠だ。
(生活経済政策2017年11月号掲載)