野党再編の王道
山口二郎【法政大学法学部教授】
野党が分裂したまま通常国会を迎えることになりそうである。自民党一強の弊害は明らかであり、10月の総選挙の前後に行われた世論調査では内閣支持率は不支持を下回った。別の選択肢を求める国民の声にこたえるためにも、野党の再結集が必要である。
しかし、実際には民進党から分かれた諸グループを束ねることには多くの困難が付きまとう。そもそも、民進党の分裂は、1990年代の選挙制度改革に対応して、小選挙区で生き残る大きな野党の塊を作る、自民党に対抗して二大政党の一翼を担う政党をつくるというプロジェクトが破たんしたことを意味している。理念を異にする政治家を小選挙区という圧力釜に入れて融合させることは失敗した。
今の野党がまずなすべきことは、自分たちが何のために政治に取り組むのか、安倍政治の次に目指すべき日本社会の姿は何なのかを、それぞれ自分の言葉で語ることである。来年度予算では、安倍首相が付け焼刃で打ち出した「人づくり革命」の2兆円パッケージが目玉となっている。言うまでもなく、これは民進党が準備してきた「オール・フォー・オール」の政策を盗用したものである。良い政策はまねされても仕方ない。とはいえ、政府の打ち出した政策は、無償化に偏り、保育や教育の供給力の質、量における向上については何の配慮もなされていない。
こういう分野では、政府への批判と、こちらからの対案の提示が必要である。野党の政治家には民進党時代に論じてきた蓄積があるはずだ。通常国会の予算審議の中で、見せかけだけの2兆円パッケージを批判するとともに、本物の社会保障改革のビジョンを示してほしい。そうした作業を通して、野党が共有すべき政権構想が現れてくるだろう。市民も労働組合もそうした政策論議に参加し、従来にはなかった野党再編のプロセスを実現できれば良いと願っている。
(生活経済政策2018年1月号掲載)