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明日への視角

孤立 孤独 孤高

堀越栄子【日本女子大学家政学部教授】

 「孤独」の解消が政策課題として正面にすえられる時代となった。イギリスのテリーザ・メイ首相は、1月18日、「孤独担当大臣」(Minister for loneliness)を新設すると発表した。2016年6月の国民投票直前、「ブリテン・ファースト」を主張する暴漢に殺害された、EU残留を唱えていたジョー・コックス下院議員(労働党、41歳、女性)が立ち上げた「孤独委員会」の仕事を継続するものである。ジョー・コックスさんは、「孤独という隠れた流行病」というキャンペーンをスタートさせていたという。
 「ジョー・コックス・ロンリネス」プロジェクトは、孤独、孤立に関するさまざまな調査をまとめている(https://www.jocoxloneliness.org/loneliness、抜粋)。
 ●イギリスでは若者から高齢者まで約900万人が孤独を抱えている。/●つながりのないコミュニティは、イギリス経済に年に320億ポンド(約4兆9000億円)の負担をかける恐れがある。/●社会的な支援(サービス)を受けたことがある17歳から25歳の若者の43%が孤独による問題を経験し、愛されていると感じことがある者は半分もいなかった。/●親の24%、障害者の50%が孤独を感じ、ロンドンで暮らす難民や移民の58%が最大の問題として孤独や孤立を挙げている。/●愛する人を介護した人(carers)の10人に8人が孤独や孤立を感じている。/●75歳以上の3人に1人が孤独感をコントロールできないと答えた。
 さて、「言いたいことがいつも言えず悔しかった。」「思ったことを何でも話せる友だちがほしかった…。」等、子どもの気持ちを描く小説家の重松清さんは、『疾走』(2003年、角川書店)の中で、仲間がほしいのに誰もいない「ひとり」が、孤立。「ひとり」でいるのが寂しい「ひとり」が、孤独。誇りのある「ひとり」が、「孤高」。と述べている。子どもの読者を意識しているので分かりやすい。
 日本においても家族、学校、職場、地域、社会などでの隔離、疎外、排除による「孤立」(そして、孤立に伴う孤独)の低減、解消に焦点を当てる国家戦略が必要である。被災地では、地域の人々や支援者の活動の中からさまざまな「孤立」脱却の経験が蓄積されている。その経験は日本の社会づくりにおおいに普遍化できるものである。

生活経済政策2018年2月号掲載