月刊誌紹介
月刊誌紹介
2024年
2023年
2022年
2021年
2020年
2019年
2018年
2017年
2016年
2015年
2014年
2013年
2012年
2011年
2010年
2009年
2008年
2007年
2006年
2005年
2004年
2003年
2002年
2001年
2000年
1999年
1998年
1997年
明日への視角

人生80年時代の総括をしよう

木村陽子【前自治体国際化協会理事長】

 「人生100年時代構想会議」の中間報告を、ランチの話題にとりあげた時のことだった。やにわに、「人生100年も生きたいと思う?」と、70代半ばの名誉教授は私に問いかけた。 
 構想会議が、人生100年時代とする根拠は海外の研究であり、そこでは2007年に生まれた日本の子どもの半数が107歳より長く生きると推計されている。このことは、厚生労働省による2007年の平均寿命(男子79歳、女子86歳)とは大きな開きがあり、にわかには信じがたい。それはそれとして、人生80年時代が到来した現在(2016年の平均寿命(男子81歳、女子87歳))、毎年伸びる平均寿命の延長線上に人生90年時代の到来を予想でき、その時には、100歳まで生きる人は稀ではない。
 「人生100年時代構想会議」の中間報告によると、超長寿社会では、①「教育・仕事・老後」という3ステージの単線形の人生ではなく、マルチステージの人生を送るようになる。②共働き世帯が増えるなど家族が変容する。③生涯にわたる学習が必要である。④スポーツや文化芸術活動、地域コミュニテイ活動など積極的に係る、とある。
 ここまで読んで私は思った。人生80年時代の到来に関する30年程前の提言・構想等と重なるところがなんと多いことかと。そこにおいても、リカレント教育の充実や、教育、労働、余暇など人生の時間配分を多様にすることが盛り込まれていた。
 人生80年社会となった今、「人生100年時代」を議論する前に、30年前の提言・構想の有効性や現在の高齢者が直面する厳しい現実を整理し、社会的及び個人的な対応策を講じておく必要があるのではないだろうか。
 「人生100年を生きたいとは思わない」という名誉教授の言葉は、人生の高齢期にある人が、「人生80年がこれほど良いものなら、人生100年はもっと良いかもしれない」と考えていないことを意味する。
 人生80年時代において、高齢者は、病気や介護の問題をさておいても、若い時のような希望があまりなく、機会にも恵まれない。たとえば、まだまだ元気な高齢者が、年齢を理由に職を失い、再就職先を見つけられない。その結果、数十年に及ぶ長い高齢期の生活設計がなかなか描けないでいる。少子化により若年労働者が不足する一方で、高齢者の能力や労働力が生かされず、社会的に浪費されているのである。高齢期が実り多き幸せな時期となってこそ、人生80年、人生100年に意味がある。

生活経済政策2018年5月号掲載