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明日への視角

東京近郊で「買い物難民」を考える

宇野重規【東京大学教授】

 先日、大学の一年生を連れて東京郊外の団地に出かけた。私鉄沿線の市営団地で、駅からバスで20分ほどの距離にある。問題はバスを降りてからだ。丘陵の高台に作られたこの団地、歩いていくと少し息が上がる。しかも5階建てでエレベーターはない。若者には何てことのない高さだが、お年寄りにはちょっと厳しいかもしれない。
 この団地が造成されたのは約50年前、まだ高度経済成長の頃だ。人口の急増を受けて作られたこの団地に入居したのは、小さな子どものいる若い夫婦中心であったに違いない。そんな住民たちは日々、子どもを抱えて、坂道を坂道とも思わずに往復していたことだろう。それから時がたち、住民の半分以上が65歳以上の高齢者になった。
 近頃、団地内のスーパーが閉鎖されたという。結果として、団地の高齢者の多くが「買い物難民」になってしまった。坂の下のスーパーで買い物をして、荷物を持って上がるのは一大事だ。市の側も問題を認識しており、スーパーの協力を得て臨時販売所を設置、学生たちは買い物をするお年寄りのお手伝いとして、団地内を駆けめぐった。
 根本的な問題解決への道は厳しい。東京の中心部から遠くないこの場所で、日々の買い物にすら困るお年寄りがいることに学生たちは強い衝撃を受けたようだ。同様の問題は日本の至るところで生じている。ネットスーパーや、ドローンによる配達が議論される一方、やはり住民同士の協力による脚を使った問題解決の重要性を実感した。

生活経済政策2018年11月号掲載