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明日への視角

資本主義は、いつ終わるのか

高橋伸彰【立命館大学教授】

 様々な矛盾に満ちた資本主義がいつまでも続くのは、現に生きている人びとにとって幸せなことではない。それでは、どうすればよいのか。経済地理学者のデヴィッド・ハーヴェイによれば資本主義は「打倒されなければならない」(『資本主義の終焉』)という。ハーヴェイはアルジェリアの独立を目指しフランスの植民地主義と激しく闘ったフランツ・ファノンの言動を参照しながら、革命的人間主義のススメを説く。
 ファノンは「ひとつの橋の建設がもしそこに働く人びとの意識を豊かにしないものならば、橋は建設されぬがよい。市民は従前どおり、泳ぐか渡し船に乗るかして、川を渡っていればよい」(『地に呪われたる者』)と述べ、宗主国が進める橋の建設や橋がもたらす便宜よりも、労働を強いられる植民地の人びとの精神的な豊かさを優先すべきだと訴えた。ファノンが言う橋と植民地の人びとを、現代の資本主義の下で次々と開発される新商品とその生産や販売のために働く労働者に置き換えてみれば、同じことが言えるのではないか。
 改めて指摘するまでもなく、資本主義が終わらないのは不断に開発される新商品を、人びとが競うようにして買い求めるからだ。しかも、際限のない購買欲を満たすために人びとは少しでも多くの所得を稼ごうとして「勤労意欲をますます高め、たとえ給料が変わらず、むしろ下がることになっても、現在の労働市場と労働環境の厳しい要求に従うようになる」(W.シュトレーク『資本主義はどう終わるのか』)。この結果、生き延び繁栄するのは資本主義であり、失われるのは人びとの精神と生活の豊かさである。
 資本主義は歴史的でも、自然に消滅するような脆弱な経済体制ではない。人びとが自らの精神に染みついた欲望から離脱し「適度な必需品による豊かな生活や安定した『善き生』」(ハーヴェイ前掲書)に真の幸福を見いだしたときに「資本主義の弔いの鐘が鳴る」(同上)。そうでなければ、人びとを不幸にする資本主義はいつまでも終わらないのである。

生活経済政策2019年3月号掲載