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明日への視角

リアル市民社会の可能性・再論

坪郷實【早稲田大学名誉教授、市民政策調査会代表】

 特定非営利活動促進法(NPO法)が施行されて20年を過ぎ、より簡易な一般社団法人の制度を含む公益法人制度改革関連3法が施行されて10年が過ぎた。NPO法人数は2019年2月末現在、51 613であり、一般法人(一般社団法人と一般財団法人)の数は約61000(2018年2月末現在)である。このように市民活動の法人格として、NPO法人とともに、一般社団法人が広く活用されている。
 市民社会は、このNPO法人や一般社団法人、任意団体、労働組合や協同組合、社会的企業や非営利目的の株式会社が含まれ、国会前集会やデモ等社会運動も含む。それぞれの国の市民社会は、政府、市場、家族・友人関係から影響を受けて作られ、リアル市民社会は、社会的不平等と排除と無縁ではなく、理想化することはできない。市民社会には、市民的側面と非市民的側面があり、この両者の紛争に満ちた相互作用とその克服の課題に取り組む必要がある。
 市民社会に可能性があるのは、それが政府(公平性)や市場(効率)とは異なる見方(連帯、寛容、多様性と共感、非暴力・公開性)からの多彩な活動がある公共空間であるからだ。その活動は、当事者と支援者による社会的自助グループの活動、新たなサービスを生み出し提供する市民事業、市民活動のネットワーク、アドボカシー(政策提言)活動、市民資金や寄付の循環の仕組み(市民財団や基金、市民金融等)を含む。この中でアドボカシー活動の重要性について述べたい。国の政府や自治体政府が捉え損なっている地域での市民の切実で多様なニーズを把握し、その解決策に取り組むのが、市民活動や市民事業・協同組合の活動である。こうした実践に基づき具体的な政策提案がなされる。例えば、情報公開制度、障がい者政策、地域福祉政策、食の安全に関する政策、気候保護・エネルギー政策等の新たな政策を提案してきたのは、市民社会組織であり、その政策の実現を通じて政治や経済社会が一歩一歩刷新されている。
 2019年統一自治体選挙に向けて刊行された、新しい市民政治プロジェクト編『市民が描く社会像2019―自治体政策リスト30』(生活社、2018年)は、こうしたアドボカシー活動の一端を明らかにしている。本書は、市民による政策提案活動がより活発になり、これを推進する生活感覚のある自治体議員や国会議員が多く生まれるきっかけになればと発刊された。

生活経済政策2019年5月号掲載