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明日への視角

主権者の覚悟

山口二郎【法政大学法学部教授】

 12月に行われたイギリス総選挙では、EU離脱を唱えるボリス・ジョンソン首相が率いる保守党が大勝し、労働党は第2次世界大戦後最悪の敗北を喫した。保守党政権の緊縮政策で痛めつけられた労働者は、生活苦への不満のはけ口として、東欧からの移民に憎悪を向けた。そして、緊縮を押し付けた張本人である保守党政権が打ち出したEU離脱に飛びついた。なんとも憂鬱な話である。
 日本、アメリカ、イギリスで平気で嘘をつき、自分の犯した不正をごまかす下劣な指導者が権力を握っている。理性と正義を唱える野党はなかなか支持を得られない。石が流れて木の葉が沈む時代と嘆きたくなる。しかし、これらの権力者を支持する人々が愚かだと言っていては、事態を打開する知恵は出てこない。
 日本では、昨年末に「桜を見る会」をめぐる疑惑が発覚し、安倍晋三首相が公費で支持者を接待していたことについてまともな説明をしないことに、さすがに国民も怒り始めたようである。世論調査の支持率も低下している。今年の秋には衆議院議員の任期も残り1年となる。オリンピックの後には解散総選挙も行われるだろうというのが政界の常識である。
 問題は、安倍政権に代わる政権のイメージを国民に提示できるかどうかである。安倍政権の支持率は下がったとはいえ40%程度を確保している。ただし、その支持の理由は他よりもよさそうという消去法的なものである。よりよい政権の選択肢の存在を国民が納得すれば、安倍政権は崩壊する。
 要は、政権を担う主軸となる政党が明確になることである。本稿執筆の時点では、枝野幸男・立憲民主党代表が呼び掛けた国民民主党、社会民主党との結集の行方は見えない。しかし、政権を担える政党を作ることは急務である。また、小選挙区において野党候補を一本化することも、政治を転換するために不可欠である。詳細な政権構想は必要ない。選挙前は、安倍政権の下で歪んだ日本の経済と社会を立て直すための基本的な方向性について合意することで十分である。
 史上最長となった安倍政権は、モラルに関しては史上最低である。「桜疑惑」についての安倍首相の開き直りを許すなら、政治の堕落を看過したことについて、我々は後世の人々に指弾されることになる。2020年は、民主主義を担う主権者として覚悟を決める年となる。

生活経済政策2020年1月号掲載