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明日への視角

政権交代か、政策実現か ー連合への提言ー

高木郁朗【日本女子大学名誉教授】

 いずれにしてもこの秋には総選挙がある。この選挙で、政権交代をいうならば、原則的には、すべての選挙区で全野党共闘実現が必要である、ということになる。かなりきわどい言い方をすれば、この構想に、障害となっているのは、連合である。傘下の産別支持政党が立憲民主党と国民民主党の2つに分裂しているし、全野党といって共産党が入ってくることには大きな難色を示しているからである。
 問題の根源には、連合が求めているのは、「政権交代」なのか、「政策実現」なのか、という論点があるように思われる。連合は、民主主義の深化の観点から、左右の全体主義的勢力を排しつつ、政権交代を可能とする二代政党的体制をめざす一方、春季生活闘争時の政策・制度闘争の内容のように、ナショナルセンターとして、いうならば、構成組織を超えて、いわば日本の6000万人雇用者層の代表として、政策の実現をめざしている。
 政策の実現にかんしては、政権についている政党のいかんを問わないはずである。自民党政権であれ、立憲民主党政権であれ、連合がもとめる政策の実現に協力してくれるなら、いわはその看板はどうでもいい。ILOが一貫して推奨してきた「政労使」の三者協議の仕組みのなかでの「政」とは、政党の内容は問わぬ「政府」である。
 もう一度問うが求めているもの、あるいは求めるべきものは、「政権」なのか、「政策」なのか。答えは、「政策」であろう。あるいは「政策」であるべきであろう。そうだとすれば、「民主主義のための政権交代」というもう一つの目標についても、政策上の選択の結果が反映されるとみることもできる。
 ナショナルセンターとしての連合は、特定の政党支持ははずしてしまい、それは構成組織や傘下の地方連合会にまかせ、今度の選挙の政策上の焦点は何かをしっかり示す方が、はるかに選挙での存在感を示しうるのではないか。ここからすれば、あらかじめ決めた政党の好ききらいではなく、候補者また選挙区の実状において、政策を軸に「この指とまれ」というかたちで結集をはかることかできるのではないか。そうすれば、選挙共闘といって統一行動を互いに強いることもなくなるのではないか。

生活経済政策2021年7月号掲載