総選挙を前にして〈地球規模で考え、地域レベルで行動する〉初めての投票権行使と、先に生れてきた者たちの責任を問う
齋藤勁【一般社団法人 勁草塾 代表理事】
間もなく行われる衆議院選挙で初めて投票に参加する人は、2003年に誕生された方々である。2006年に18歳以上に引き下げてから5年を迎える。残念ながら10代投票率は低下傾向である。2003年といえば、イラクに大量破壊兵器がある!と、米英軍を中心にした有志連合(国連決議で構成されたものではない)がイラクに攻撃を開始しフセイン政権を倒した年である。この2年前2001年9月11日アメリカに同時多発テロ事件が起き、テロとの戦争と宣言しブッシュ大統領はアフガニスタンに侵攻した。この戦争も有志連合である。以来20年という長い間アフガニスタンに駐留していた米軍は8月末に完全撤退した。
今年初めて選挙権を行使する方にとり、年齢と戦争を重ねる事は残念だし辛いことと思う。しかし、その有志連合に日本も加わってきた事も事実である。テロとの闘い、アメリカの責任が問われているが、我が国自身の関与等もしっかり検証していく事が重要であり、政治の果たす役割は極めて重大だからだ。
先の東京オリンピック・パラリンピック競技に難民選手団が参加した。選手たちに声援を贈る気持ちや視線は憐みでなく、何故戦争に? 何故難民に? 等、多角的分析が必要と感じたのではないだろうか。現在、我が国内で起きている人種差別・人権問題に無関心であってはならないという事にも繋がるからだ。
人類史はあまたの殺戮を繰り返し、さらに核爆弾の使用(広島・長崎)により実に多くの命が失われた。しかし、未だ地球上では核兵器開発に終止符が打たれていない。現実に目を凝らし、命の尊さ・重さ・平和の大切さを全世界に訴え共有することが、道は遠くても失われた尊い命に応える事であるからだ。
今年は、東日本大震災から10年目である。津波・原発・火災等の発生による被害は解消されていない。新型コロナ問題も大きく立ちはだかっている。気候変動は地球の存続に係る事であるし、そのスピードは科学者の指摘を聞くと恐ろしいものである。
主要国での選挙権年齢も18歳以上である。隣国韓国は19歳から。各国の政治家や政党の政策・議論を調べ、議会制度・民主主義を学ぶ機会でもあろう。
政権交代か! 擬似政権交代か? アベノミクスの継続? 政治家・候補者・政党を見抜く力を鍛え蓄え発揮しようではないか。市民に政治を取り戻す絶好の機会である。未来は注目している。今、生きている我々が「立ち止まり・考え直し・自らの意志での行動を」選択し、〈地球規模で考え、地域レベルで行動する〉事を。
(生活経済政策2021年10月号掲載)