急がれる看護助手の待遇改善
木村陽子【奈良県立大学理事】
思いがけなく手を骨折し、生まれて初めて入院した。入院先は地域の急性期医療を担う病院の整形外科であった。そこでみたものは、想像以上の看護師の忙しさである。ナースコールを押してもすぐには来てくれない。「お待ちください」と言われながら来てくれないこともある。看護師は患者の世話でてんてこ舞いなのである。
病棟の看護師の配置は7 (患者)対1(看護師)。日勤は8時半から17時まで、夜勤は16時半から翌朝9時までの勤務である。夜勤の看護師は3人で、看護師1人当たり患者数は17人前後。日勤の看護師は超多忙だが、夜勤の看護師も同じである。夕食と朝食の配膳、就寝前と夜間及び明け方のおむつ替え、体温・血圧測定、点滴、採血等するべきことはやまほどある。
整形外科の急性期病棟は手術前後の患者等手厚いケアが必要な患者ばかり。最近は認知症の高齢患者も増えてきた。手術前後の管理、人工呼吸器、点滴等にくわえ、手術直後の患者等が必要とする介助(食事介助、トイレ介助、着替え等)もしなければならない。介助のほとんどを担うのが看護師だ。看護師の忙しさは、看護とそれ以外の業務がうまく分離できていないことにもよる。
そこで期待されるのが看護以外の業務を担う看護助手の活躍であるが、実態はそうはなっていない。私が入院していた病棟では、日勤の看護助手は、正規とパートを含め通常2人(日曜は1人)で、夜勤の看護助手は1人だったが、いない日もあった。入退院時の部屋の整備、入浴介助、シーツ交換、おむつ交換、配膳等、看護助手も座る間もないほど多忙である。看護助手は看護師のパートナーとして、病棟の運営に大きな貢献をしているが何しろ数が少ない。
入院していた病院だけではなく全国各地で、看護助手の求人に人が集まらないのが現状だ。これは新型コロナウイルス感染症流行のせいだけではない。夜勤もおむつ替えもある仕事の割には、待遇が今一つというところなのだ。夜勤に対する手厚い手当、給与の引き上げ等、看護助手の待遇改善と仕事の魅力度アップは、日本の構造的な看護師不足を緩和し、充実した看護を実現するためにも欠かせない。このことを切実に感じた入院であった。
(生活経済政策2021年12月号掲載)