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明日への視角

革新的な神学校—「オンリーワン」であることを学ぶ

木村陽子【前自治体国際化協会理事長】

 私は、2023年春に7年間通った夜間学校を卒業する。あまりに楽しいので自主留年を続けた学校とは、東京にあるJ神学校である。神学校とは言え、牧師志願者だけではなく、私のように聖書を勉強したいという学生も大歓迎の学校である。岸義紘先生がJ神学校の創立したのは1990年、建学理念は「だれでも・いつでも・どこででも」である。この神学校はあまりにも型破りであったため、キリスト教界から信頼を得ることができたのは卒業生が活躍しだしてからだと聞いている。
 普通、神学校は全寮制で入学資格は大学卒業かそれと同等程度である。だが、 J神学校は設立当初より夜間の対面授業コースとともに通信教育コースをもうけ、入学随時、学歴・年齢・性別・職歴・国籍等すべて不問で寮もない。2年で卒業だが、何年でも在籍できる。在学生は、タクシー運転手、国会議員秘書、刑務所出所者、会社員、小学校や大学の先生、元ホームレス等で、日本人だけではなく、韓国やミャンマーなど在日外国人もいて、年齢は10代から70代までと、まさに多文化共生社会である。
 ここでは人を測る共通の物差しがつくれない。学歴も成績も全くあてにならない。成績優秀者が牧師の仕事を十分にできるわけではなく、強い召命意識がもっと大事である。説教演習の時間に、1人1人の説教を聞いているとそれまでの人生を反映し、うまい下手を通り越したそれぞれの味わいがある。
 J神学校で勧められるのは起業である。同じ苦労をするなら既存の教会に就職するよりも、自分で何かしらの事業や活動を起こせと言われる。刑務所を出所後に入学し、一から教会をはじめ、今は牧師として出所者の社会復帰のために活躍する卒業生等、卒業後の進路も実にさまざまだ。多様性に伴う少々の摩擦はあるものの、私たち1人1人がかけがえのない「オンリーワン」であり多才であることを実感できる場は、人生そして社会に活力を与える。

生活経済政策2023年3月号掲載