不条理への怒りを忘れてはいないか!「国と地方は対等」は何処へ長い物には巻かれろか
齋藤勁【一般社団法人勁草塾代表理事・沖縄県政策参与】
少し前の報道になるが、今年4月8日沖縄タイムス社と朝日新聞社合同による辺野古新基地建設を巡り全国46都道府県知事へのアンケート調査結果が報じられた。タイムス紙1面トップ「42知事代執行賛否示さず……自治侵害の危機感薄く」という見出しである。代執行は分権に沿うは14人、沿わないは長野県のみ。地方自治体が下した処分を国が採決によって直接否定する「裁定的関与」は8県が地方分権の観点から課題があるとして「不適切」、2県が「適切」他は無回答であった。外交安全保障は「国の専管事項」を理由に回答を避けている傾向だ。自分の県に新たに米軍基地を整備されるとなれば住民の反発により国の専管事項と言っていられるだろうか?
2020年11月全国知事会は一致して日米地位協定改定の抜本的見直しをはじめとする提言を決め政府に求めた。自治体の意思を明確に示したものとして高く評価したがアンケート回答との整合性が問われる。
先の国会で「非常時に国が自治体へ指示」できるようにする改正地方自治法が成立した。コロナ禍や自然災害を例にした政府の提案で国会での議論はあったものの全国知事会は「事前に適切な協議・調整」など運用面での配慮を求めたにすぎなかった。本来、国が行うべきは指示ではなく支援であり特に財政支援が重要であると考える。コロナ禍で自治体が財源に窮した事は明らかで財政支援そして現行法での「助言」や「勧告」でも対応が出来る。2000年施行の地方分権一括法では国と地方の関係が「上下・主従」から「対等・協力」へ改められた。近年の政府の動きはこれらの蓄積に逆らうものであり自治体側の姿勢が問われている。都道府県議会や市町村議会を通じての民意が求められている。「長い物には巻かれろ」では済まない。市民の生命・財産・基本的人権がないがしろにされているのである。
更に驚くべき事件が起きた。沖縄県内で米軍人による16歳未満の少女に対する性暴力である。そして事件に対する政府の対応である。怒りに震える。事件が起きたのは昨年12月沖縄県が知ったのは6月25日しかも報道で、岸田首相の訪米・県議選・慰霊の日を過ぎてからである。この国の指導者に人間の心はないのだろうか? 不条理への怒りは起きないのか? 米国に配慮し、わが国民・自治体は黙殺する政府に主権者は怒りを示さなければならない。
(生活経済政策2024年8月号掲載)