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明日への視角

2025年をモデルチェンジ元年に

三浦まり【上智大学法学部教授・生活経済政策研究所所長】

  2025年は冷戦後の世界秩序がいよいよ大きく変動するのを目の当たりにする年になるだろう。日本もこれまでの来し方を顧みて、モデルチェンジに踏み出す時にきている。
 外交については、アメリカにしがみついてさえいれば、中国の台頭を抑えて日本の国際的地位が確保できるという思考は、もはや限界に来ている。米中対立の代理戦争に巻き込まれることは、アジアの誰の得にもならないことは自明である。気前よくカネを出し続ける余裕が日本経済に残っているとも思えない。結局のところ、何が日本の国益なのかを深く吟味する必要があり、一部の専門家が独占するのではなく、開かれた議論が必要だ。

 この点は内政でも同じことがいえる。従来の日本の政策決定はボトムアップの合意形成を重んじるため、遅い、変わらないと批判され、1990年代以降は一貫してリーダーシップを強化することが目指されてきた。しかし、集権モデルはトップに正確な情報が集まらず、また優れた判断力のある人物がつかなければ、悲惨な結果を生む(混迷する韓国政治から日本が学ぶべき点でもあるだろう)。
 女性の人権分野に関心を持ってきた私にとって、この20年近い期間の日本の停滞ぶりは目に余るのだが、人権のみならず、科学技術や研究教育の分野でも、また経済力という意味でも、衰退方向に向かっているように思える。共通して言えるのは、世界の変化を捉える日本の感度が弱いことがあるように思う。正確に認識している日本人がいないわけではないが、そうした人の声は日本の政策決定には往々にして反映されない。国内エリートの情報フィルターがかかってしまうのだ。
 この問題は強いリーダーシップで解決できるものではなく、むしろ批判的思考や多角的な視点こそ必要だろう。権力が集中すると、私物化する人物が現れた時にそれを糾せないという根本的問題が存在する。強いリーダーシップ信仰を見直し、異論を尊重し、議論する文化を育て方が、よほど良い組織決定に到達できる。
 2025年という転換点が平和で豊かな未来につながるよう、生活研の知的リソースを活用し、新しい視点と批判精神を積極的に奨励する社会に向かっていきたい。

生活経済政策2025年1月号掲載