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明日への視角

いつでもだれでも学ぶことができる理想の社会

梶原貴【日教組中央執行委員長・生活経済政策研究所会長】

 子どもは「社会を映す鏡」や「おとなの背中を見て育つ」とも言うが、「学ぶ」ことに関しても同じことが言えないだろうか。
 日本における、おとなの学力は世界のトップ水準ではあるが、生活満足度は最低だった(OECD 24年)。30歳以上の修士課程在学者割合は16.2%で、各国平均の26.0%に対して開きがある(OECD 22年)。また、日本の労働者のうち、仕事に積極的なのは5%で、各国平均の23%と比べて差がある(ギャラップ社 23年)と、それぞれ指摘している。
 一方、子どもたちの学ぶ意欲の低さも大きな課題としてとらえる必要がある。「自分で勉強の予定を立てる」「自律的に学習する」などに「自信がない」と回答した割合が、OECD加盟国で最も高い結果になった(OECD PISA 22年)。これらおとなと子どもの調査に相関関係があるか否かの研究は現在行われているようだが、全く無関係ではないと考えている。
 24年12月、中央教育審議会に「初等中等教育における教育課程の基準等の在り方について」が諮問され、次期学習指導要領策定にむけた議論がスタートした。しかし現在の学校現場は「カリキュラムオーバーロード(大森他 24年)」の状態であり、今こそ学習内容の精選が必要だとされている。では精選した学習内容はどうするのか。
 小学校の内容を精選したら、中学校に送り順次高校まで先に送って軽減をはかり、その後は大学等におけるリスキリング・リカレント教育等の生涯学習体系に移行していく方策が大切ではないだろうか。年齢に関係なく、必要に応じて気軽に学び直せる環境が整備され、保護者や身近なおとなが、いきいきと学ぶ姿を見れば、子どもたちは「学ぶことは楽しい」「自分も学び続けたい」と思うようになるのではないだろうか。そうすることで、子どもたちの学習も、点数や順位に重点を置くのではなく、学ぶ意欲や学びあう人間関係づくりなどに重点が置かれ、子ども自身が主体となる学習を構築できるのではないかと考える。常に「学ぶ」ことが当たり前の社会に移行できるよう、理想を追い求めて運動に邁進していきたい。

生活経済政策2025年3月号掲載