お互い様と言い合える社会づくり
大谷 強(関西学院大学経済学部教授)
2007年07月29日の参議院選挙では、民主党系の議員数が大幅に増えた。社会的制度の運営についてあからさまなミスが明白になった。政府・与党などが推し進めてきた競争至上主義政策により、社会的制度に大きな歪がうまれ、社会を構成する人々に貧困が広がってきた。このままの方向で進んで良いのだろうか、立ち止まって見直そうという意識が強くなったといえる。将来への安定感が失われ、人と人との信頼感が崩壊した社会に対する警鐘だろう。多様な人々が投票した積み重ねであり、主要な要因を断定はできない。
政府与党の失点が民主党の得点となったという見方もある。その見方に立つと、人々の価値観はあまり変わっていないことになる。私も「過剰な消費者意識」はそのままだと思う。
消費者として個々人が活動する方が全体主義よりも望ましいという意見もある。しかし、消費者主義は、滅私奉公には馴染みやすいのではないかと私は懸念する。払うお金はできるだけ少なくして(だれも税金や社会保険料は抑えたいと思うのは当然だ)もっとより多くのサービスを提供してほしいとだけ、遠目で願っている存在といえる。
多種多様な人々がそれぞれ特色を発揮でき、より気持ちよく生活できる社会を創るためには、自分なりの力を発揮する考え方が重要だ。自主的に労力を提供したり知恵を働かせる方法も考えられる。他に方法を思いつかないのであれば、自分たちの社会が必要とするお金を拠出する。より有効に使ってほしいという行動を含めて。
投票に出向くだけでも努力が必要だという意見がある。だが、日頃、もっと多様な役割を担う行動をした積み重ねの一つとして、投票行動もあると思う。納めた税金や社会保険料なども、社会で有効に使われているかを意識し、より適正な方向にする行動も大切だ。
その人なりの方法で、積極的に社会を共に担おうと思っている人々を励ます働きかけが、政治に関る組織の役割だろう。
(生活経済政策2007年9月号掲載)