月刊誌紹介
月刊誌紹介
2021年
2020年
2019年
2018年
2017年
2016年
2015年
2014年
2013年
2012年
2011年
2010年
2009年
2008年
2007年
2006年
2005年
2004年
2003年
2002年
2001年
2000年
1999年
1998年
1997年
明日への視角

経済の民主主義的制御

福留久大(九州大学名誉教授)

 英国労働党のブレア政権樹立後、1998年の白書で英国政府の新交通政策が表明された。日本でも、自動車の抑制、公共交通の活性化を目指す基本方針は紹介された。2005年夏、ロンドンで交通省を訪問した折りに、改めてこの白書を読み返した。原書と訳書の書名。A New Deal for Transport: Better for Everyone - The Government's White Paper on the Future of Transport, July 1998; 運輸省運輸政策局訳『英国における新交通政策』(1999年、運輸政策研究機構)。注目点は、自動車交通の加害面を力説する所。とりわけ、“But the way we are using our cars has a price - for our health, for the economy, for the environment.”と、健康への加害を、経済や環境への負の効果より重視する所。日本では自動車会社に気兼ねして書けない次のような文章もある。「常識的見解と逆に、自動車の中の空気は、路上の歩行者の空気より汚染されており、運転者や同乗者は汚染にまみれている」。その結果、「英国の成人の最大の死亡原因は、冠状動脈の心臓病である。その一因は、徒歩や自転車で行けるときでも、余りに自動車に頼りすぎることにある」。
 健康のため、経済のため、環境のため、クルマを降りてバスに乗る試みが、全国の自治体で推進されるなかで、先端的社会実験というべきが、2003年2月にロンドン中心街に導入された Congestion Charge(渋滞料金)制度。旗振り役は、旧労働党左派のリビングストン市長。バス・タクシー・自動二輪・自転車は対象外。特別登録した区域内居住者は90%減額、身障者や環境適応車は100%減額。その他の一般車は、月曜から金曜まで、7時から18時30分までに渋滞料金区域に入った場合、当日22時までに5ポンド(1030円)を支払う。2004年7月から8ポンドに引き上げ。渋滞緩和で区域内への到達時間は制度前比30%短縮、04年度の徴収料金9000万ポンドは、路線バスの増発、歩道・通学路・自転車道の整備に充当された。
 日本では、マイカー増加が野放しで、公共交通の衰退に歯止めが掛からない。交通分野でも経済の民主主義的制御に、英国並みの努力が必要ではないだろうか。

生活経済政策2007年12月号掲載