民主党と国際的視野
田中素香(中央大学経済学部教授)
昨年12月の総選挙で敗れた民主党の支持率は最近8%に下落した。解散が早すぎたと野田前首相を責める声が党内にあるそうだが、そのような小手先の話ではないだろう。
民主党の政権獲得は敵失によるものだった。小泉政権の構造改革に対する改革疲れ、安倍・福田内閣の無責任な政権の放り投げ、自民党指導部の「上から目線」など末期的症状に国民が絶望した。だが民主党政権の政策は一貫せず、何をやりたいのかはっきりしなかった。
文教政策では大幅で非常識な予算カットが続き、「教育立国」の時代というのに、日本の文教予算(GDP比)は先進国(OECD)中最低となった。女性勤労者が仕事を続けるための保育所などの施設充実を期待したが、はかばかしい進展はなかった。
外交・安保政策もお粗末かつ無責任であった。普天間基地問題の迷走、東アジア共同体提唱や親中国路線、鳩山首相の国連総会での二酸化炭素削減約束などを民主党は今どう考えているのか。政権時の政策を総括し、国民に示して欲しい。その反省に立って、新しい政策体系を打ち出さない限り、国民の多数が民主党に投票する事態は訪れないであろう。
現在の自民党政権の周到な政策は野党転落の反省がバネになっている。それは、日本には2大政党制が必要だということを示している。中道左派政党としての民主党の再生が重要となるが、外交・安保政策を含めて時代に適合的な政策を策定するには、国際的な政党交流を進める必要があるのではないか。ヨーロッパでは中道左派が政権をとっても、外交・安保政策が揺らぐことはほとんどない。EUでは国を超えた政党の相互交流が盛んで、5年に一度の欧州議会選挙では、各国の同傾向の政党が共同綱領作成に取り組む。こうした準備が民主党には決定的に不足していた。
世界は21世紀に入って様変わりした。とりわけ中国は、大資産家の共産党幹部が疑似王朝風に独裁する奇妙な超大国になった。その膨張主義の脅威はさらに強まろう。20世紀後半の世界認識はもはや通用しない。民主党には、10年先を展望しながら、アメリカの民主党、ヨーロッパの中道左派政党、そして韓国・台湾などアジアの民主主義国の類似傾向の諸政党とも、恒常的に意見を交換して綱領を練り上げ、また人脈を築くプロセスが必須であろう。
(生活経済政策2013年4月号掲載)