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明日への視角

急増する特殊詐欺

小俣 利通(日本郵政グループ労働組合中央執行委員長)

 「俺だよ、オレオレ…交通事故で示談金が要る」。ご存じの「オレオレ詐欺」は、2004年に警察庁が「振り込め詐欺」として名称を統一した犯罪である。
 2013年の被害総額は、特殊詐欺全体で約487億円に上り過去最悪となった。このうち「オレオレ詐欺」は約170億円を占め、最悪期だった10年前の水準に戻ったという。関係機関によって注意喚起や防止対策が強化され、国民的に広く情報は届いているはずだが、如何せん身内の不幸には抗えないのである。
 以前、私の妻は、当時大学生の息子から交通事故を起こした旨の電話を受け、瞬間的なパニックに陥ったことがある。電話を切って蒼白の妻に、事故の相手や怪我の状態を問うても何も分からないという。実際には、大学構内での微細な接触程度だったが、事故と聞いた瞬間に気が動転し、その後の内容は耳に入らなかったようである。
 詐欺事件を伝えるニュースに触れては、なぜ簡単に騙されるのかと思ってしまうが、子や孫の窮状に直面すると「多少の声の違い」など問題ではないのだろう。
 詐欺の手口も多様化している。当初は、その名のとおり金融機関から現金を振り込ませる手法が殆どだったが、キャッシュカードを預かるものや、現金を取りに行くもの、宅配便を利用するものなど様々である。なかでも急増しているのが郵便局のレターパックで、2013年には864件、約54億円に上っており、日本郵便は、本年7月以降、過去の詐欺に使われた住所あてのレターパックを対象にX線検査を導入するとしている。
 さまざまな対策を講じてもなお増加を続ける特殊詐欺。最も効果的な予防策は、日頃からの家族の絆なのかもしれない。

生活経済政策2014年8月号掲載