絶望は希望の始まり
金子勝【慶應義塾大学名誉教授】
SNSやショート動画しか見ない若者が増える中、AKBの総選挙のような「推し活」選挙になり、政策論争のないイメージ選挙になった。その点で、中道改革連合は、古いおじさん2人が前面に立ち、女性はおらず、“生活者ファースト”では参政党の日本人ファーストの二番煎じであった。だが、中道敗北の原因はそこだけなのか。
野党は選挙のたびに離合集散を繰り返し、失敗を重ねてきた。民進党、希望の党、そして中道改革連合。その前にも新生党、新進党があった。もちろん小選挙区制度の下で野党が勝つためには自民党に対抗する“塊”を作らないといけない。だが、そこに政策対立軸がない。
私はここ数年間、立憲の国会議員に呼ばれるたびに「新たなマニフェストを作るべきだ」と言い続けてきた。とくに高市政権に対抗するには、アベノミクスがいかに日本経済をボロボロにしたかを示す必要があった。過去において民主党が政権を取れたのも、下から政策マニフェストを作って「コンクリートから人へ」というスローガンにまとめて、期待感が盛り上がったからだ。ところが、立憲幹部は、民主党時代のマニフェストをぶち壊し、党解体に導いた張本人であった。政権獲得後、彼らはいきなり子ども手当を倍増させ、TPP、消費税増税を打ち出し、原発輸出まで言い出した。2024年の立憲の代表選でも、野田佳彦、枝野幸男の両氏は「マニフェストに縛られない」と言い放っていた。自分たちは政治エリートで、自らの政治決断で国の運命が決まるのだとおごり高ぶっていた。
結局、彼らは永田町の数合わせの論理に走るしかない。結果は大政翼賛会体制の誕生だった。しかも参議院では立憲民主党と公明党は分かれたままだ。とはいえ今、中道改革連合を分裂させれば、本当に野党は豆粒になってしまう。さりとて上から強引に合併をしてもうまくいかない。今やるべきことは、じっくり時間をかけて市民と一緒に下から政策を作って、落選議員を支え、新党を自分たちの政党として育て、新たな立憲・公明の連携関係を構築する運動である。その際、極右勢力やフェイクに負けないSNSの発信力も育て、若い新たな研究者集団を加えたプラットフォームづくりも不可欠だ。
(生活経済政策2026年3月号掲載)
